Cross Talkクロストーク

日常のつながりが、いざという時の力になる

日本郵便株式会社 東北支社 × みやぎ生活協同組合

▲(左から)日本郵便株式会社 東北支社 経営管理本部長 小岩 龍生さん/みやぎ生活協同組合 生活文化部 地域活動推進課 地域連携活動推進グループチーフ 金田 志保さん

モリノカレッジは、みんなのつながりの
輪を広げるプラットフォーム。
互いの価値観やアイデアがクロスしたら、
どのような効果が生まれるのでしょうか?
クロストークをヒントに、あなたの活動の
可能性をぜひ、広げてみてください。

「日本郵便株式会社 東北支社」(以下、日本郵便)は、郵便局ネットワークを生かし、見守りや自治体連携、防災・減災など地域の安心を支える取り組みを進めています。
一方、「みやぎ生活協同組合」は、店舗や宅配、メンバー(組合員)による活動、防災啓発などを通じて、人と人がつながり、地域で支え合えるコミュニティづくりに取り組んでいます。
今回は、日本郵便 東北支社 経営管理本部長の小岩龍生さんと、みやぎ生活協同組合 生活文化部 地域活動推進課の金田志保さんに、日常のつながりが地域の安心や、いざという時の力にどうつながっていくのかについてお話を伺いました。

地域とともに歩み、震災の経験を未来へ

プロフィールを教えてください。

小岩 私は入社以来、約40年にわたって郵政事業に携わってきました。東北支社での勤務が長いのですが、名取郵便局や一関郵便局では局長も務め、地域の皆さんと直接接し、地域の声を身近に感じながら仕事をしてきました。

現在は東北支社で、これまでの経験を生かしながら、東北全体の郵便局の運営に携わっています。郵便局ネットワークを次の世代につないでいくことが、今の自分の責任だと考えています。

金田 私は、みやぎ生活協同組合(以下、みやぎ生協)の宅配部門で、トラックに乗って商品をお届けする仕事からスタートしました。その後、宅配の営業職を経験し、現在は生活文化部で、防災・減災をはじめ、「こども食堂」や地域の居場所づくりなどを担当しています。

現在の取り組みと、震災での経験が現在の活動にどのようにつながっているのかを教えてください。

小岩 日本郵便の強みは、全国津々浦々にある郵便局のネットワークと、地域に根差して働く社員です。都市部だけでなく山間部などにも郵便局があり、地域のニーズに応じたサービスを提供しています。

東北では、震災や原発事故の影響で営業を休止していた福島県双葉町の双葉郵便局が2024年3月に再開し、東北227すべての自治体に郵便局がある状態に戻りました。郵便局の店舗では各地の特産品を全国に紹介しており、令和6年能登半島地震の際には被災地の特産品も扱い、被災地支援にもつながっています。また、自治体から窓口でのマイナンバーカード申請支援業務や配達社員による空き家調査業務を受託しているほか、自治体との包括連携協定で地域見守り活動や、災害時に避難所に避難している被災者への郵便物の配達等にも取り組んでいます。

郵便局という身近な拠点と、日々地域を回る社員、その両方を生かしながら、従来の郵便・物流、貯金、保険などの郵政事業にとどまらず、地域の課題やニーズに応じた取り組みを広げています。

金田 みやぎ生協というと、店舗や宅配をイメージされる方が多いと思いますが、メンバーが主体となった活動も盛んです。私が所属する生活文化部では、地域の居場所づくりやボランティア活動など、メンバーの皆さんと一緒に、地域に密着した活動に取り組んでいます。

また、みやぎ生協でも各自治体と包括連携協定や災害時物資協定を結び、災害時の物資要請や復興支援など、さまざまな場面で連携しています。

小岩 東日本大震災では、62名の郵便局員の尊い命が失われ、159の郵便局がすぐには営業を再開できない状況となりました。それでも「地域の暮らしを支えなければならない」という想いで、窓口の早期再開、避難先などへの「移動郵便局」の設置、通帳や印鑑を失った方への現金引き出しにも対応しました。

配達も、道路の寸断やガソリン不足の中、自転車や徒歩で再開しました。こうした経験を通じて、郵便や物流、金融サービスの重要性と、郵便局が地域の「よりどころ」であることを改めて感じました。

また、震災の経験や教訓から生まれたサービスが「防災ゆうストレージ」です。避難生活で必要になるものや大切なものを専用ボックスに預け、必要な時に避難先などへ届ける仕組みです。そのほか、東北支社が入る日本郵政グループ仙台ビル1階には、東日本大震災アーカイブ施設「つなごう未来へ」を設け、社員の間で震災の記憶や教訓をつないでいます。

金田 みやぎ生協も、東日本大震災で大きな被害を受けました。当時48あった店舗のうち14店舗が被害を受け、16名の職員が津波の犠牲になりました。そのような状況でも、発災当日には27店舗、翌日には44店舗が営業を再開しました。停電でレジが使えない店舗では、商品を100円、200円といった会計しやすい価格にして店頭で販売し、地域の皆さんに必要なものを届け続けたと聞いています。

震災をきっかけに、メンバーによる新たな活動も生まれました。「自分も何かしたい」と考えたメンバーが自主的に絵手紙づくりなどを始め、その後、みやぎ生協でもボランティアセンターを立ち上げ、他団体と連携しながらさまざまな支援活動を行いました。その中で始まったのが、被災された方々がほっと一息つき、人とつながることのできる「サロン活動」です。石巻大橋店での活動をきっかけに、各地へと広がっていきました。

現在は、震災を風化させず語り継いでいくために「3.11を忘れない取り組み」を続けています。店舗の「みんなのスペース」での防災展示やローリングストックの紹介、被災地スタディツアーなどを通して、震災の経験を伝えながら、防災を自分ごととして考えていただく機会をつくっています。

また、みやぎ生協文化会館「ウィズ」の「東日本大震災 学習・資料室」では、震災当時の被害や復興の歩みなどを伝えています。震災を経験していない職員も増える中、私たち自身が当時のことを学び、地域で果たす役割を考える場にもなっています。

地域と関わる中で、大切にしていることを教えてください。

小岩 何より大切にしているのは、郵便局が地域の皆さんにとって身近で安心できる存在であることです。郵便局では日頃から、窓口での会話やサービスを通じて、地域の方と接する機会が多いからこそ、困りごとやニーズに寄り添える存在でありたいと思っています。

最近では終活に関するご相談も増えています。「郵便局の終活日和」というサービスを読みやすいマンガの冊子にして、相続や介護、遺品整理などの相談先をご紹介しています。

金田 みやぎ生協では、メンバーの中から生まれる声を大切にしています。こちらから働きかけるだけではなく、メンバーの皆さんが自主的に活動していけるよう、その想いを後押しすることを大切にしています。東日本大震災後に広がったサロン活動も、被災地のメンバーの「自分も何かしたい」という声から始まったものです。

顔の見える関係から、支え合える地域へ

日常のつながりが、いざという時の地域の力になると感じる場面について教えてください。

小岩 郵便局では毎日、郵便物や荷物をお届けしていますが、ただ配達するだけではなく、地域の小さな変化にも気を配っています。

例えば、新聞や郵便物がたまっていたりすると、「何かあったのではないか」と気にかけます。実際に家の中で倒れている方を発見したケースもあります。日々の配達が、地域の見守りや安心・安全にもつながっていると思います。

そうした日頃のつながりは、災害時にも生かされています。東日本大震災の時には自治体から共有いただいた情報を基に、避難所に避難されている方にもできる限り郵便物を届けました。その経験はその後にも生かされ、岩手県大船渡市で発生した大規模林野火災の際にも、避難先を確認して郵便物をお届けしました。

普段から地域を回り、お客様と顔を合わせているからこそ、避難先でも「この方だ」と分かります。特別な時だけではなく、日頃から地域の皆さんと接点を持ち、信頼関係を積み重ねていくことが、いざという時に地域を支える力になると感じています。

金田 私たちが防災について大切にしているのは、特別な時だけのものではなく、日々の暮らしの延長線上にあるという考え方です。配送を通じてメンバーの皆さんと日常的に顔を合わせる中で生まれる信頼関係や、店舗、イベント、メンバー活動を通じた地域のコミュニティも、いざという時に地域を支える力になると思っています。

私は小学校や地域のイベントなどで、ローリングストックのワークショップを行っています。そこで大切にしているのは、知識を一方的にお伝えするのではなく、防災について話すきっかけをつくることです。親子や地域の方同士で「わが家には何が必要かな」「こういうものも備えておいた方がいいよね」と話すことで、防災を自分たちの暮らしに関わることとして考えていただけたらと思っています。

そうした活動では、被災経験をまとめた冊子も活用しています。阪神・淡路大震災を経験したコープこうべが作成した冊子に、宮城・福島での東日本大震災の経験を加えた「自然災害に備える こうべ&みやぎ・ふくしまからのメッセージ」には、災害時に役立ったものや実際の使い方など、被災された方々の声が紹介されています。そうした経験を地域の皆さんと共有し、「自分だったらどうするだろう」と考えていただく。こうした日常の会話やつながりの積み重ねが、いざという時に支え合える地域の力につながっていくのだと思います。

地域住民と行政をつなぐ「橋渡し役」として、どのようなことを大切にしていますか?

小岩 郵便局は地域の皆さんにとって身近な拠点であると同時に、行政と日常的に連携できる立場でもあり、それが私たちの強みだと思っています。

今、力を入れている取り組みの一つが、自治体から委託を受けて郵便局長が「集落支援員」として活動する取り組みです。人口減少や高齢化が進む地域では、住民の声を行政へ届ける機会が少なくなっているところもあります。

例えば、山形県西川町では、郵便局長が地域の皆さんとの座談会を開き、困りごとや地域課題を町へ報告しています。顔なじみだからこそ話していただける声を行政へ届け、一緒に解決策を考える。そんな橋渡し役を担っていきたいと思っています。

金田 みやぎ生協では懇談会を開催し、日頃の活動の中で寄せられたメンバーの声を自治体へ直接お伝えするとともに、自治体が感じている地域の課題や困りごとも伺っています。お互いの声を聞きながら、その地域に必要なことを考え、活動につなげていくことを大切にしています。

仙台市の「Xross Innovation BOSAI(クロスイノベーション防災)」にも参画されています。どのような取り組みをされていますか?

小岩 イベントなどを通じて防災・減災の普及に取り組んでいます。「防災ゆうストレージ」を紹介するほか、分科会にも参加し、郵便局の窓口や配送ネットワークを生かして何ができるか、皆さんと一緒に検討しています。

例えば、地震の揺れを感知して自動的に電気を遮断する「感震ブレーカー」の普及もその一つです。仙台市や参画企業の皆さんと連携しながら、将来的には郵便局の窓口やカタログで紹介したり、ゆうパックでお届けしたりできないかと検討しています。

金田 3月に行われた「仙台防災WEEK」では、みやぎ生協太子堂店で株式会社ポーラ様と一緒に防災イベントを行い、ローリングストックの紹介や防災食の試食、防災ボックスづくりなどを実施しました。

店舗を単に買い物をする場所としてだけではなく、「みんなのスペース」なども活用しながら、地域の皆さんが防災について知り、考える場所として使っていただけることをお伝えできたと思っています。

最近では、地域と一緒に取り組む分科会にも参加し、さまざまな企業の皆さんと、それぞれの強みを生かして地域の防災のために何ができるのかを話し合っています。

お互いの取り組みを知り、今後一緒にやってみたいことはありますか?

小岩 店舗や宅配だけではなく、地域の居場所づくりや防災・減災など、幅広い活動をされていることを改めて知りました。郵便局も地域に多くの拠点を持っていますので、一緒に防災について学ぶ機会などもつくれるのではないかと思います。

もう一つ、一緒にできたらおもしろいと思ったのが、郵便局の買い物支援サービス「おたがいマーケット」です。買い物が難しい地域の方に商品を注文いただき、郵便局の配送ネットワークを活用して地域の拠点へ届ける仕組みで、商品の受け取りをきっかけに地域の交流にもつながっています。

みやぎ生協さんの商品や地域とのつながりと、郵便局の配送ネットワークや拠点を組み合わせることで、買い物を支えながら、より多くの人とのつながりを生み出していけるかもしれません。そんな取り組みも一緒にできたらいいですね。

金田 もともと、地域を回る郵便局の配達員の方には、顔が見える存在だからこその安心感があると感じていました。改めて郵便局の幅広いネットワークが、地域にとって大きな力になるのだと感じました。

例えば災害時には、生協の宅配担当者と郵便局の配達員の方が、それぞれ地域を回る中で得た情報を共有できるといいですね。道路や建物の状況など、地域の細かな情報を共有することで、よりきめ細かな支援につなげられるのではないかと思います。

また、小岩さんからもお話があったように、一緒に防災イベントや防災教室を開くこともできると思います。両者が連携することで、防災をより身近に感じてもらい、地域全体の防災意識を高めることにもつながるのではないでしょうか。

これからの地域づくりには、どのような「つながり」が必要だと思いますか?

小岩 災害時に支え合える地域をつくるためには、平時から顔の見える関係を丁寧につくっていくことが大切だと思います。

郵便局は日頃から地域の皆さんと接する機会が多いからこそ、普段のあいさつや会話を大切にしています。高齢化や人口減少が進む中、行政やみやぎ生協さんなど、それぞれが持つ強みを掛け合わせて、地域の方が顔を合わせる機会をつくっていければと思います。

金田 防災は、一つの団体だけで解決できる課題ではありません。小岩さんがおっしゃる通り、平時から顔の見える関係をつくり、連携を深めておく。その積み重ねが、いざという時に地域を支える力になるのだと思います。

今回のクロストークの感想を教えてください。

小岩 みやぎ生協さんは家族で普段から利用しており、東北の被災地の食材を使った商品「古今東北」のお豆腐はよく買っています。地産地消や被災地域の応援にも力を入れていることは以前から感じていました。お話を伺って、防災・減災だけでなく地域コミュニティづくりにも幅広く取り組まれていることを改めて知りました。人と人とのつながりを大切にする姿勢は郵便局とも共通しており、地域を支えるパートナーとして今後も連携していければと思います。

金田 今回のクロストークを通して、「防災ゆうストレージ」や「おたがいマーケット」など、私自身も知らなかった日本郵便さんの取り組みを知り、全国に広がる郵便局のネットワークや地域との日々の接点が持つ力を改めて感じました。郵便局とみやぎ生協、それぞれの強みを生かしながら、安心して暮らせる地域づくりに向けた連携を深めていければと思います。

日本郵便株式会社 東北支社

郵便・物流、貯金、保険などのサービスを通じ、地域の暮らしを支える日本郵便。東北227自治体すべてに郵便局を展開し、地域に身近な拠点とネットワークを生かして、自治体との連携や地域活性化、防災・減災など、地域の課題に応じた取り組みを進めている。

みやぎ生活協同組合

店舗や宅配を通じて、宮城県内を中心に地域の暮らしを支える生活協同組合。商品やサービスの提供に加え、地域の居場所づくりや子育て・高齢者支援、ボランティア、防災・減災など、メンバーとともに安心して暮らせる地域づくりに取り組んでいる。