モリノカレッジ クロストーク

株式会社エー・アール・シー×enspace株式会社

▲(左から)株式会社エー・アール・シー/取締役尾﨑健一さん
enspace株式会社/インターン 浅野目崇浩さん、菅原里奈さん、鈴木志竜さん

モリノカレッジは、みんなのつながりの
輪を広げるプラットフォーム。
互いの価値観やアイデアがクロスしたら、
どのような効果が生まれるのでしょうか?
クロストークをヒントに、あなたの活動の
可能性をぜひ、広げてみてください。

2024年1月14日、「性格にあった防災」をテーマにしたワークショップが開催されました。簡単な質問に答えるだけで、自分の性格に合った防災の備えを診断してくれるWEBサイト「せいかくぼうさい」を使い、パーソナルな防災について発見していこうというユニークなイベントです。
主催したのは「せいかくぼうさい」の展開をはじめ、高品質なITサービスを提供する株式会社エー・アール・シー。開催場所を提供したのは、東北最大級のコワーキング・シェアオフィス施設「enspace」を運営するenspace株式会社。株式会社エー・アール・シー取締役尾﨑健一さんと、ワークショップに参加したenspaceのインターン浅野目崇浩さん、菅原里奈さん、鈴木志竜さんの3名でクロストークを行いました。

防災の取り組みは各地で実施されているのに実際の防災行動に繋がらないという課題

はじめに、みなさんの活動内容を教えていただけますか?

尾﨑人と人との繋がりを大切にし、社会の課題解決に取り組むIT企業で新規事業創出の責任者をしています。本社は東京ですが、仙台営業所としてenspaceに入居しています。enspaceは学生さんがメインで運営を回していて、のびのびと働く姿を目にしています。若者たちとコミュニティ形成をしてきているenspaceであれば、若者たちが活発な意見をくれるだろうと思い、ワークショップをここで開催することにしました。

鈴木現在大学4年生で、enspaceではバックオフィスのインターンを担当しています。大学に入学してから、社会のことを何も知らないなということに気づき、インターンで知見を広めようと思いました。入社以降、enspaceでは起業家をはじめ多くの社会人と交流ができていて、社会に出る前に良い経験をたくさん積めていると感じています。

浅野目僕は大学4年生の5月に休学すると同時にenspaceでインターンを始めました。将来の選択の幅を広げるためにベンチャーで働いてみたいというきっかけから、スタートアップやベンチャー企業もたくさん集まるenspaceに身を置き、社会人0年目を経験しています。

菅原現在は大学3年生で、大学生になったら色々なチャレンジをしようと思っていたのですが、コロナ禍で…。2年生の夏頃、やっぱり何か新しいことがしたいとenspaceでインターンをしている先輩へ相談し、インターンを始めました。だから私は、enspaceの縁で入社しています(笑)

「せいかくぼうさい」を立ち上げた経緯は?

尾﨑宮崎県新富町で自治体のDX関連業務を行っている際、令和4年台風14号の豪雨で浸水や土砂災害などの被害が甚大で、社員とその家族も被災しました。そのことから、IT企業として、防災に関わることができないかと考えるようになりました。

一方、私個人の活動としては、東日本大震災を機にいくつか社団法人の活動をしています。そのうちのひとつ「一般社団法人防災ジオラマ推進ネットワーク」の理事の1人として、首都圏にいる仲間たちとオリジナル段ボールジオラマキットの提供とワークショップの運営を行い、「防災」のハードルを下げることを目的に活動しています。その代表理事の上島洋さんと、「しなやかに災害に向き合い、乗り越える」をテーマに活動している「一般社団法人減災ラボ」の代表理事鈴木光さんが中心となって「パーソナライズド防災研究所」というプロジェクト型の研究所を立ち上げました。

同じ環境にいても防災知識や日頃の備えのレベルは人によって差があり、それは性格に起因するのではと考え、「もっと一人ひとりの深い部分、性格のようなところにフォーカスをあてないと、防災意識の向上、防災行動につながらないのではないか」という仮説を立てた時に、IT企業(エー・アール・シー)として、その力をお借りしてプロジェクトを一緒に立ち上げたいと思ったんです。

そしてスタートしたのが「せいかくぼうさい」です。

パーソナリティ特性に着目することで一人ひとりに合った防災アクションを提案

「せいかくぼうさい」の特徴とワークショップ開催に至る経緯は?

尾﨑心理学において信頼性の高いビッグファイブ理論に基づいて、性格を6タイプに分けていることが特徴で、いずれワークショップを開催することを念頭に、やりやすい分け方にしました。「個性派」や「おだやか」、「優等生」など、学校のクラスにいそうなタイプ名にすることで、参加のハードルを下げることを意識し、10の質問で性格タイプを診断することで、タイプごとの防災知識や防災行動、「防災スイッチ」という防災行動につながるきっかけなどの診断結果が分かるようになっています。

今回、一般的に防災への関心が高くないとされる若年層に、「せいかくぼうさい」を体験してもらい、反応や意見を聞く実証実験を行いたいと考え、仙台市が運営する仙台BOSAI-TECHイノベーションプラットフォームの「2023年度 試作開発支援プログラム」に採択いただきました。性格診断に合わせたアドバイスという仕掛けをおもしろいと感じることで、それを起点として防災を身近に感じてもらい、ワイワイ防災について話し合ってもらいたいというのが狙いです。

インターンのみなさんが、ワークショップに参加した経緯を教えてください。

鈴木元日に能登半島地震があり、自分はちゃんと防災ができているのか気になったのと、性格と防災を組み合わせて考えたことがなかったので、楽しそうと興味が湧きました。

浅野目僕もきっかけは能登半島地震ですね。小学校3年生の時に東日本大震災を経験しているのに、地震や災害、防災のことを忘れてしまっていたので、備えるきっかけにしたいと参加しました。

菅原私の防災のイメージは学校の防災訓練で、少しお堅いというか…、義務感で参加するものでした。でも、「せいかくぼうさい」のチラシがポップでかわいくて、性格と防災を絡めるなんて新しい考え方ですし、診断で自分を知ることができるのはおもしろそうだと思いました。あと、社会人になったら一人暮らしをしたいと考えているので、そろそろ防災を自分ごと化したいと思いました。

ワークショップの内容と工夫した点を教えてください。

尾﨑参加人数は約40人。それぞれの診断結果があっているかの評価と、「せいかくぼうさい」の仕組みを広げたり、進化させたりするためのアイデアを発表してもらうのが大きな流れです。工夫したのは、6つの性格タイプ別にグループ分けし、「これ分かる」とか「いやちょっと違うよね」とか、ディスカッションをしてもらう形にしました。また、議論の活性化を促すため、自分の意見を付箋に書いてもらいました。最後の発表では、自分の意見を整理することはもちろん、性格の異なる他のグループの発表を聞くことで、気づきというか、多様性を理解し、考えが深まるよう促進したことですね。

ちなみにみなさんのタイプは何でしたか?グループ内の様子も聞かせてほしいです。

菅原私は「バランス」タイプでした!女性と男性で診断結果の内容が分かれていて、結構凝っているなと。私ってこういう強みがあったのだ、確かにこういう弱みがあるとか、当てはまることが多かったです。周りでMBTI診断という性格診断が流行っていて、 Z世代のことをよく分かっているな!と思いました。私のグループには年下も年上もいましたが、思ったことをフラットに言い合えるような空気感があったので、ディスカッションしやすかったです。

尾﨑さすがバランスのいい回答ですね!浅野目さんは何タイプでしたか?

浅野目僕は「まじめ」タイプでした。実際に防災の活動をしている大学生もいて、やっぱり真面目な人が集まったグループでした。真面目グループは、結構真面目な話で盛り上がりました(笑)診断結果で出た性格タイプ別で出たおすすめの防災行動として、身近なものを使って行うトイレ訓練があり、そんなこと考えたこともなくて、おもしろかったです。

鈴木僕は「優等生」タイプだったのですが、最初「俺ら、優等生」みたいな、みんなニヤニヤしながら集まりましたね。同じものを見て話しているはずなのですが、こういう視点があるんだとか、おもしろいアイデアが出て楽しかったです。

尾﨑グループによって行動に違いが出ていたのが印象的でしたね。「まじめ」タイプは付箋の貼り方もきちんとしていて、「個性派」タイプは重なって見えないなど自由度が高く、やっぱり個性派だなと思ったのを覚えています。

尾﨑みなさん、今後こんなのがあったらいいなとか、これはちょっとピンとこなかったなどを具体的に教えてもらえると嬉しいです。

鈴木ワークショップが終わって家に帰った時に、同居している親に備蓄している?とか、防災グッズある?というような話をしました。防災に関する意識は高まったと感じつつも、じゃあ次に何をすればいいんだろうというのが、若干ハードルが高いなと感じました。グループ内でもそういった意見が出ていました。

浅野目「せいかくぼうさい」をどう広めるかについて、イベントとしてやると参加のハードルがあるかなと思いました。学校や職場でやると盛り上がって認知も広がるのではと思います。

菅原私は「もっと知りたい!」と思うタイプなので、例えば東日本大震災からの復興で活躍したこの人のタイプはこれでしたとか、タイプ別でどう活躍しているとか知れたら嬉しいです。あと、このタイプとこのタイプは相性がいい等、マッチングできたら興味を持ってくれる学生が増えるかもしれないです。

防災を自分ごと化してアクションに繋げる「せいかくぼうさい」がそのきっかけになれたら

今回の感想をお願いします。

尾﨑今回のワークショップは、私たちのファシリテートがなくても、いい意味で勝手に盛り上がっていました。「せいかくぼうさい」を起点に、活発な意見が飛び交って、まさに狙い通りでした。40代や50代など、別の年齢層で開催したら、こんなにアイデアは出なかったと思います。MBTI診断とリンクした方がいいのではなど、様々な視点からの意見があり、若年層に絞って開催したのは正解だったと感じています。ワークショップを終えて、若年層以外に活用する時はこう変えてみようなど、適合性や展開のしやすさ等改善点をみんなで色々と考えているところです。

浅野目僕の自宅は、川の近くにあります。「せいかくぼうさい」の質問項目の中に、自宅や学校、職場等周辺環境を選択する項目があり、日頃の備えとしてハザードマップ確認と挙げられていました。能登半島地震がきっかけでワークショップに参加しましたが、地震だけが災害ではないと気づかせてもらえました。

菅原防災について、自分は想像以上に何も知らなくて、各地域で防災活動が頻繁に行われていること、防災グッズは乾パンだけではなくて、新しい技術を使ったものがあることなど、知らないことだらけで、もっと知ろうと思いました。これから一人暮らしをしたり、結婚や子どもを持ったりした時に、どう備えてくかを考えていかなきゃと気づけたので、すごく大きな収穫でした。今日のクロストークは、開発の経緯や想いを直接聞くことができる貴重な機会でした。「せいかくぼうさい」がこれからどう発展していくのかが楽しみです。

鈴木自分も何も防災について知らないなと感じました。なんとなくの知識だったり、いざ災害が起きても色々と適応できそうだけれど、ちゃんとした知識があるかは微妙だなと。「優等生」という診断が出たのだから、ちゃんと優等生になろうと思いました(笑)クロストークは、イベントの目的を聞けたことが貴重な経験でした。またぜひ、体験できることがあれば参加させていただきたいです。

尾﨑課題に向き合って何かきっかけをつくるというのもIT企業のミッションなので、このクロストークをきっかけに、町内会や自治体、企業など、色々なアイデアをお持ちの方々とお話ができるといいなと思っています。

株式会社エー・アール・シー

「人と人とのつながり」を大切にし、コンサルティングからシステム設計・開発、インフラ構築、ユーザーサポートに至る高品質なITサービスを提供。近年はITを活用した防災関連の事業にも取り組む。

enspace株式会社

東北最大級のシェアオフィス・コワーキングスペース。場所の提供のみならず、起業・創業支援、バックオフィスサポートのサービス展開や、交流イベントの企画・運営などのコミュニティの活性化も行う。ビジネスパーソンや学生など多様な人が集まる場所であることから、テストマーケティングや試作品の試験運用など、サービスの実証実験の場としても活用可能。